乳幼児用
ショッピングカート

今回の開発は、従来品（AW3/4）は背面タイプが3才まで、対面タイプが2才まで乗れるのですが、「4才まで乗れるカートが欲しい」という要望があったのと、その他にも従来品販売から10年近くの間に集まった課題を解決するために始まりました。

開発にあたって、特に安全性・居住性・走行性などはすごく考慮しました。
小さなお子さまから大きなお子さままでモニターを行い、乗り出して前から転倒しないように、抜け出そうと前乗りしても落ちないベルトの長さをきちんと考えたり、お子さまの指や腕をはさんでしまうような危険な隙間をきちんと回避できているかなど、安全性に関する確認は重点的に何度も行いました。

確認のひとつとして、「首がまだ座っていないお子さまが座った時に呼吸状態に影響がないか」を確認するため、カートに乗せた状態でお子さまにパルスオキシメーターをつけてモニターの実施もしました。4ヵ月ぐらいまでのお子さまに協力いただきましたが、まずお子さまの小さな足の指にセンサーを緩すぎず、きつくなく装着するのが難しかったです。お子さまが動いたりするとセンサーがすぐ外れてしまいますし、泣いてしまうとそれで数値がぶれたりもするので。結構大変でしたが、甲斐あって問題がないことも確認できました。

あとは、「自力で立ち上がってしまわないか」ということも。お子さまの腕が当たる側面形状が段差になっていると、そこに手をかけて立ち上がるきっかけになってしまうのでフラットな形状にしました。
とはいえ全てフラットにするとボテっとした見た目になるので、段差を入れてできる限りスッキリ見せるなど、デザインとの兼ね合いは苦労したところです。

居住性としては、生後2ヵ月から使えるシートユニットの、お子さまが揺れた時やカートが旋回した時でも体勢を崩さない形状作りは当社ならではの技術だと思います。ヘッドレストのクッション部と背面にあまり段差がないことも、すごく大事なところなのでこだわって作っています。

走行性では、ハンドルの持ちやすさもよく検討しました。
モニターで従来品・新製品の比較走行をしてもらって、新製品の方が大きくはなっているけど走行しやすいという評価をいただいています。
また、従来品の背面式は横型ハンドルでしたが、新製品では縦型ハンドルにしました。横型ハンドルがなくなったことでリクライニングもしやすくなりますし、足元のカゴ入れも、空間が空いている分荷物が出し入れしやすくなるメリットがあります。

それに、横型ハンドルだとどうしても背の高い方は猫背になってしまうのですが、縦型にすることで背の高い人は上の方を持って、背の低い人はちょっと下の方を持ってと、どんな身長の人でも操作しやすくなりました。
もちろんパパが使うことも想定しているので、モニターでは男性にも確認いただいています。

新製品は、従来品を混ぜてネスティングできるようになっているのですが、この部分は一番苦労しました。
新旧をネスティングさせるためには足回りの形状を同じにする必要があるのですが、新製品の本体は大きくなっているので、製品上部のフレームは幅が広くなります。
フレームの幅を広げながら本体との危険な隙間をフォローしつつ、足回りは従来品と同じ幅にしなければならない。何回も設計し直してバランスをとるのがむずかしかったですね。

また、使い心地や安全性の話とはまた別に、工場が組み立てやすいかどうかや、お客さまがメンテナンスパーツを交換しやすいかどうかも検討する必要があります。使用時に簡単に外れない、だけど組み立てや交換はしやすい構造作りに悩みましたね。
より良くなるよう最終段階まで何度も練り直したので、自信を持ってお届けできる製品に仕上げられたと思います。

いろんな場面で苦労はありましたが、特に私は初めての企画リーダーで、継松さんはグループ会社から異動してきて初めての開発製品だったので、時間をかけて丁寧に作ってきた分、思い入れが深い製品となりましたね。

見た目の部分では、色にもこだわりがあります。
ママたちはカラフルな色の方が好みという意見がありますが、お店としては、主役はあくまでもそのお店の商品なのでカートにはあまり目立ってほしくないという意見があって、シリーズの1番最初はマロン系の色で作りました。
それから少し経って、もう少し元気に見える色でもいいんじゃないかと言ってくださるお店も出てきて、前回はマンゴーオレンジという色にしました。しかしそれも10年ぐらい経ってくるとニーズも変わってきますね。

企画当初は流行りのくすみ系のピンク・グリーン・ブルーなど、いろんな組み合わせで案を出していたのですが、やっぱり1番その施設に馴染む、あまり主張しすぎない色がいいという意見でまとまって、白とベージュ系の色になりました。
白はオフホワイトにしたのですが、何回もカラーチップなどで確認しながらこのぐらいの色がいいなというのを検討した結果、本当に馴染みがいい色になったと思います。
本体の方があまり主張しない色なので、フレームはパキッとしたダークグレーにして色差をつけるなど、全体のデザインにも気を遣っています。お店に置いた時にそのお店のグレードも少し上がるような感じをイメージして、全体として高級感があるように試行錯誤しました。

お店側のご要望とユーザー側のご要望が必ずしも合致するとは限らないのでバランスは難しいですが、少しでもお店側の売り上げに貢献したいという気持ちと、お子さまを少しでも長く座らせてママ・パパたちが十分にお買い物できるようにしたいという気持ち、どちらも大切にしながら取り組んでいます。

現在乳幼児を子育て中の当事者としては、外出先にこのカートがあるだけでありがたいなってすごく感じたんですよね。だからどこにでも置いて欲しい。

気持ちとしてはユーザーのことを考えて作った製品になるので、たくさんのお子さまに座っていただき、このカートがあることでママやパパも安心してお出かけしてもらえると嬉しいです。